中国ドラマ『キングダム〜戦国の七雄』(原題:風雲戦国之列国/风云战国之列国)ドラマレビュー其の2:大トリは始皇帝嬴政、5集〜ラストまで【魏国編/鄭則仕】【斉国編/李立群】【秦国編/喻恩泰】キャスト情報・あらすじ・感想※ネタバレあり
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今日は、中国ドラマ『キングダム〜戦国の七雄』(原題:風雲戦国之列国/风云战国之列国)ドラマレビュー其の2:大トリは始皇帝嬴政、5集〜ラストまで
を紹介するよ。
1集〜4集までの、燕・趙・楚・韓、については其の1を読むが良い。
其の2では、残りの魏・斉、そして最後は大トリ始皇帝嬴政で締めくくりだ。
どのエピソードで来るのか楽しみだ。
春秋戦国時代とは?を少し説明しておこう。
周王朝の東遷とともに始まった動乱の時代。
絶対的な支配者が居らず、旧来の秩序も崩壊し200余りの諸侯が割拠する状況は、下剋上と実力主義の時代を招いた。
西周時代(前1014頃〜前771)
※中国まるごと百科事典
周王朝は封建制度をとり、要地に王族や信頼のおける功臣を封じて王朝の安泰を目論んだが、
前770年ごろ、内乱と異民族の侵攻でいったん滅亡する。
それ以前を西周、以降を東周と呼び分けるが、東周の始まりが春秋時代の幕開けという解釈でいいだろう。
春秋時代(前770〜前403)
※世界の歴史マップ
東周は、王権の弱体化が進み、宗族や氏族を柱とする社会が崩れ始めた。
西周時代は階層社会で秩序を保っていたが、それが崩れ実力主義の下剋上が活発化した。
戦国時代になるとさらにそれが露骨となり、庶民にも政治参加だけでなく下剋上ワンチャンがある時代に変わった。
衰退した周王室にかわり、諸侯のリーダーを務めるのはどの国の君主か。
その座を巡る戦いも熾烈を極め、同時にそれは諸子百家に活躍の場を与えた時代でもあった。
この諸子百家とは、知恵者や技術者の事で。
孔子、老子、墨子、孫武など、後の儒家、道家、墨家、兵家の祖と崇められる人々が活躍した時代でもある。
身分制度に捉われていれば、時代に合った人材を得られないという背景を容易に想像できるはずだ。
200余りいた諸侯も魏・趙・韓・楚・斉・燕・秦の七国に絞られ、各国は富国強兵に鎬を削った。
※世界の歴史マップ
秦によって中国が統一されるまでのおよそ550年におよぶ戦乱の時代が春秋・戦国時代であり、その前半、晋が三国(韓・魏・趙)に分裂するまでを春秋時代(紀元前770〜紀元前403)、分裂後を戦国時代(中国)(紀元前403〜紀元前221)とよぶ。
ってな感じで始めるよ、最後までよろしく!
風雲戦国之列国、5集〜ラストまでってどんなドラマなん?
第5集:魏国篇〜士人的魔呪
戦国七雄は競って富国強兵に励んだが、思い切った改革(変法)で最初に抜きん出たのが魏だった。
↑は魏の初代文候(魏斯)、中の人、鄭則仕長老サマ。
孔子の弟子子夏をマスターと呼ぶ文候は、改革成功でさらに己が大抜擢した李悝が中国最古の成文法を作ったりし、さらには農業政策なんかも大成功で、当時は高ポテンシャルな国だった。
しかし、その後は貴族たちを優先し、有能ではあっても例の”士”人の事は信用できずに冷遇してたのだが。
時と共にそのツケが溜まり没落していく。
其の1、episode3で登場した楚で改革を進め版図拡大の立役者となった呉起さんも、元は魏の”士”人であったのだが。
冷遇され楚に亡命し、そこで(結局殺されたけれども)やりがいのある仕事をし、ついでに魏へのリヴェンジも忘れなかった。
魏が信用せずに、さらには酷いことして追い出した”士”人たちは、わりとその後大物になってたりして。
例えば秦の『商鞅の変法』で有名な商鞅さんも、魏の人だった。
この才能高き”士”人たちを信じ、重用していれば魏の運命は明らかに変わっていただろう。
追い討ちは信陵君で仕上げもバッチリだ。
信陵君は、てこの愛読書『達人伝』(其の1参照のこと)でわりと推している男子だ。
結局信陵君が魏における最後の賢人だったのだが、当時の王(実の兄)に信じてもらえず敢えなく撃沈してしまう運命だ。
例の如くナレ説で、長城の戦い(前404)は語られたが、魏攻略のクライマックスである”大梁城の水攻め”は華麗にスルーされてしまった。
せっかく変法で成功を収めたのに、その後身分制度に捉われ身分の低いものを冷遇したせいで起きた滅亡、自業自得の滅亡だ、とそう言う結論だった。
確かにそうだね。
第6集:斉国篇〜靖綏之謎
斉の君主は元は呂氏であったが、それがいかにして田氏の国になったかを、最初の方で説明する。
有り体に言うと田氏以外の貴族たちを殺したり追放したりして根こそぎ駆除し、斉は田氏の国となる。
文化都市として栄え、楽しそうな国なので自ずと入国者も増え人口は七国の中で一番多かったとされている。
蹴鞠や闘鶏の発祥の地も斉らしい。
君主が好色で贅沢好きなので国民もそうなった、とナレ説されていた。
孟子が、物は言いよう、みたいな感じで王様に話をしてたり。
”稷下の学”の荀子が達観した感じでちろっと出て来たりもする。
この回のキーマンは、↑田地さん、斉国の湣王、中の人、李立群長老サマだ。
湣王は、第1集で燕の胸熱間諜&昭王CPにロックオンされてた斉王だ。
当時、国の行き来は割と簡単だったようで、
士人や食客たちは、この国がダメならあっちの国、みたいに流れ歩いていたので。
このシリーズは、国ごとの話だがわりと登場人物がくんずほぐれずに絡まっていて、わりと興味深く見れる仕様だ。
以前に他の貴族たちを根こそぎ駆除し、田氏だけのパラダイス国家を作ったはずだが。
その田氏たちが今度は邪魔になって来た斉王。
秦が商鞅の変法で国力をあげたのを見習って、身内の田氏をどんすか駆除し段々と裸の王様になっていく。
このシリーズには珍しく女子も出て来て、この女子は斉王建の母となり、斉を”争わない国”へと導いていく事となる。
元から愛国心など持たない王&国民であり、こうなるといかなる賢者でも救う事は難しい。
まぁ賢者は、義理がない限りさっさと見極めてこの国を出て行っているだろう。
斉が滅びたのは国民のせいだ、というナレ説だったが。
国民が楽しく自由に暮らす事の何が悪いのか、国を愛せなかったのは国民のせいではないと思うが、まぁいいか。
補足として。
東西の”帝”に君臨と称し、秦との蜜月時代もあった斉だが。
その秦による斉攻略は、ほかの国と比べてごくごく簡単に、さくっと、苦労せず(さしたる戦闘もせずに)あっさりだった。
第7集:秦国編〜為什麼是秦国
てこの希望に反し、この回のキーマンは↑商鞅、中の人は喻恩泰で「白色月光」で不倫する男子だった男子だ。
商鞅の時代といえば、魏を見限って頼った先の秦は昭襄王(昭王)の時代だ。
つまり、あのみんな大好き”ミーユエ(羋月)”女史と恵文王との息子だ。
このドラマがどこまで真実かは知らんが、てこのミーユエ女史の認識はこのドラマと似たようなものだ。
だから、”ミーユエ(羋月)”を観ている時は常時違和感というか落ち着かない感じだった事を思い出す。
秦の君主はもともとあまり身分が高くなかった為に、他の国からはどちらかといえばバカにされるポジションだった秦。
でも反面、貴族の力も数も(他国に比べて)さほどではなかった。
それが追い風となり、さらに商鞅の冷酷完璧オペレーションにより改革は成功する。
ナレ説だと、人道を無視したマインドコントロール風に言われていたが、実のところはまた違うだろう。
と言うのは、先にも述べているように『史記』とは武帝時代に書かれたものであり、基本姿勢は武帝アゲ本なので、真実かどうかは重要ではないからだ。
で、この昭襄王というのが人材を集めるプロで。
文官も優秀揃い(范雎、燭寿、魏冉、楼緩)で、宰相の任に耐えれる人材も何人もいれば計算が得意な者もいるし、術治に長けた者も多く、楚の懐王を誘い込み勾留できたのも彼らの巧みな策の賜物だ。
将軍たち(胡傷、王齕、摎、白起、司馬錯)もイケてて、特に白起は突き抜けていた。
でも他もみんなイケてるので、誰が大将であっても東方六国にとっては大きな脅威だった。
そんな人材を集め使いこなす昭襄王もまた比類なき傑物であったと言う事だ。
てこ激推しの白起は、宰相王候により自決を迫られることになるのだが。
ここはナレ説ではなく、実際の再現VTR風に映像付き、だった。
てこの認識とはいささか違うが、まあいいだろう。
長平の戦いで40万もの人間を生き埋めにしたのだから報いだろう。
で、商鞅は国内に敵を量産してたのだが、昭襄王崩御とともに処刑される。
白起にしても、商鞅にしても、人生は夢の如く〜、なんともやるせない最期だった。
これが戦乱の世の常である。
で、次の孝文王は即位三日で死去。
次の荘襄王は即位三年で死去。
次がお待ちかねの嬴政・始皇帝だ。
呂不韋や嫪毐、太后(趙姫)のお馴染みのエピもあるが、これも諸説ありなにが真実なのかはわからない。
でも少なくとも「皓鑭伝(コウラン伝)」ではないだろう。
あれも(こちらも)ドラマだから鵜呑みは禁物だぜ?
もとは弱国ちっぽけ国が、春秋戦国時代を生き抜きついには天下統一したぜ。
賢者は他国にもいたし明君も他国にもいたし大将軍も他国にもいたが、勝因はタイミングに他ならない、という締めくくりだった。
何それ(爆)
風雲戦国之列国てこが最後まで見た感想
春秋戦国時代の争乱500年をわずか7集で纏めてある、歴史教材として優秀なドラマだった。
検証部分にはわずかながら疑問点もあるが、細かいところは気にせんでいいのかもしれない。
始皇帝が天下を統一した事は知っていても、わちゃわちゃしていた時代の事は実はわかっていない方が多いだろう。
てこもだ。
国も王号も乱立して、しかも下剋上時代で、人の行き来も比較的自由なので。
移籍した先からさらにレンタル移籍とか、人もわちゃわちゃ時代だ。
そんなカオスの一片を垣間見れるそんなドラマに仕上がっている。
要所で地図説明してくれるのもありがたかった。
作中では嬴政のことはあまり語られていないが、政は趙の邯鄲で生まれている。
政のぱぱ・後の安国君、子楚が人質生活を送った場所だ。
大都市で、商業都市であった関係で、呂不韋のような大商人が多くの別宅を構えいて、それらが生み出す富こそが趙の力の源だった。
政にとって恨みの募る国、趙を政が攻撃したのは前229、政31歳の時であった。
嫪毐の乱に便乗し呂不韋を失脚させ、親政を始めたのが前237、政27歳のときなので。
わずか数年で趙(趙は2番目、1番目は韓)を滅亡に追い込んだ男子、それが嬴政だ。
本ドラマには続編があり、というかシリーズ化されたのかもしれんが。
2022年に「風雲戦国之梟雄」がブロードキャスト済みだ。
こちらはまだ日本上陸していないので、中文だが時間が出来たら見てみようと思う。
どうやら、国ではなく人物にフォーカスされた列伝仕様のようで面白そうではあるね。