中国ドラマ『キングダム〜戦国の七雄』(原題:風雲戦国之列国/风云战国之列国)ドラマレビュー其の1:春秋戦国時代〜滅亡への道、1〜4集まで【燕国篇/王勁松】【趙国編/于栄光】【楚国編/林永健】【韓国編/海一天】キャスト情報・あらすじ・感想※ネタバレあり
ご訪問ありがとう、てこブログへようこそ。
今日は、中国ドラマ『キングダム〜戦国の七雄』(原題:風雲戦国之列国/风云战国之列国)ドラマレビュー:春秋戦国時代〜滅亡への道、1〜4集まで
を紹介するよ。
【基本情報】
監督:金鉄木
編劇:金鉄木
70分✖️7集
つい友さんに教えていただいたこの作品。
すでに日本上陸済みで複数サブスクで視聴可能だった。
てこはユネクさんで視聴したが、プライムでも視聴可能。
いやぁ、字幕で見れるとか楽でいいです。
さらに7集とヴェリーコンパクト。
嬴政が始皇帝となるまでの春秋戦国時代における七国のうち六国は滅亡する訳だが。
その六国の滅亡を描いた物語だ。
ノンフィクションドキュメンタリー風な作りで、再現ドラマ仕様だ。
戦シーンもナレ説で、舞台はもっぱら室内なので低予算なのかもしれない。
淡々と進み、ドラマティックな演出もなしな地味なドラマだが。
歴史好きには嬉しいドラマかもしれない。
てこは歴史はわりと好きだが、この時代のことはあまり知らない。
それは、この辺りの時代の事を書いている信頼できる史料がわりと少ないからだ。
始皇帝のことでさえ『史記』の「秦始皇本紀」の章だけでしか知ることは出来ない。
しかも『史記』の著者の司馬遷は漢の武帝に仕えた人なので、どちらかといえば始皇帝のことはディスり気味だ。
ところで、中国4千年の歴史〜とかよく聞くが、これは本当だろうか。
現代の我々が「中国」と呼ぶ世界は、西暦紀元前221年、秦の始皇帝がみずから「皇帝」と名乗った時に誕生した。
「秦」が「支那」つまり「チャイナ」の語源である。
この意味で、中国史は前221年から始まる。
「中国4千年」は20世紀になってから中国人が言い出した事で、現実には根拠がない。
1911年、中国人が満州人の清朝に対して反乱を起こした辛亥革命の時、革命派はこの年を黄帝即位紀元4609年とした。
黄帝は暦を創ったとされる神だ。
日本の神武紀元と同じ感じだ。
※神武紀元〜西暦紀元前660年を、神話上の初代神武天皇の即位の年とする
この黄帝紀元が「中国4千年」の元になっているが、これは神話だ。
ってな感じで始めるよ、最後までよろしく!
風雲戦国之列国ってどんなドラマなん?
第1集:燕国篇〜燕過無痕
周の王室の支流にあたる召公奭を始祖とする燕。
薊を首都とし”まずは隗より始めよ”の故事で知られる昭王が↑だ。(中の人、王勁松長老サマ)
七国のなかで一番長い歴史を持ち”王道”を掲げる国だが、当時の燕王噲が太子ではなく子之へ禅譲した事で、斉に騙され国を荒らされてしまう。
昭王の代で、胸熱な間諜のおけげで(史実かどうかはわからない)斉を滅亡寸前まで追い詰めた。
追い詰めたのは、てこでも知ってる楽毅将軍だ。
この将軍はたしか趙出身だったと思う。
で、趙が内乱で揺れてる時に亡命し魏で士官していた。
魏の公式使節として燕にやってきた楽毅は、昭王に気に入られて客分となりその後正式に燕の臣下となった将軍だ。
後一歩のところで昭王が崩御し、後継の孝王は楽毅のことがもともと気に入らなかったので。
それをネタに斉の田単(だったと思う)が反間の計を仕掛けて、楽毅は結局追い込まれて趙に亡命した。
で、燕と言えば英雄”荊軻”だが。
最後の方にちろっとだけ出てくる。
暗殺じゃなくて生捕目的だったようだ。
もちろんキーマンとなる丹太子も出てくるが。
丹太子の動向や憂鬱は「秦時麗人明月心(麗姫と始皇帝)」がよく描かれていたので観てもいいかもしれない。
丹太子のぱぱ燕王喜のクズさが際立つ仕様となっていて。
丹の悲劇は、抗う意思を持ち続けたことと、嬴政に出会ったことと、生を貪る父を持ったことだ、というナレが心に響く。
”王道VS覇道”というテエマであり、まさに時代を読めず”王道”から外れることが出来なかったのが燕滅亡の理由だ、とわかるようでわからない締めで終わっている。
第2集:趙国篇〜烈乱之国
でも出番はほんのちょっと。
無念の死を遂げた残念な人として描かれている。
餓死とか知らなかったし、可哀想すぎた(事実かどうかは裏付け史料を調べてないのでわからない)。
趙という国は、趙氏の国な訳だが。
有り体に言うと、その趙氏の人格がすこぶるやんちゃ(悪く言うとサイコパス)なせいで国が滅びたんだよ、っていう話だ。
趙国は12代続いたが、内11代で内乱や虐殺があったという、やはりヤバ目の一族ではある、事実上。
↑の武霊王も、画期的な胡服なるものを発明したり、史上初騎馬戦隊を作ったりと、独創的かつ斬新なひらめきを持っているが。
同時に狂気も兼ね備えているので、”ひらめきと狂気は表裏一体”が趙氏の特徴だ。
で、趙という国は、元は”晋”という国だった訳で。
つまりあの名作『趙氏孤児』の背景だった国だ。
趙・魏・韓の三家連合が智氏を滅ぼし晋を分割した”三家分晋”で出来た国が趙と言うことだ。
趙という国は自業自得というか自滅の国なのだが。
”長平の戦い”は、またナレ説で結果だけが説明されるが、秦はこの戦いの勝利を機に一気に邯鄲を奪うつもりだったし、それは簡単なはずだった。
しかし、それにブレーキをかける将軍がおって、その人物はてこ推し将軍【李牧】なのだが。
当時の趙王、悼襄王お気に入りの重臣、郭開に嵌められて首を刎ねられるという、稀代の名将なのにもっすごく残念な最期になってしまう。
李牧将軍が死んで1年後に趙は滅びるのだ。
趙氏の性格をテエマにし、”自制心は大事だよ”というようなメッセージで締めくくっている。
確かにそうだ。
ぁ、そうそう、《完璧》の故事も作中でさらっと説明してくれてた。(藺相如)
第3集:楚国篇〜貴族之殤
↑は楚懐王、中の人、林永健パイセンだ。
最期は”乱心だ、乱心、乱心ーーーー”で、こちらも残念な亡くなり方をしているのだが。
ちょっと見入っちゃう演技で、古参感だだ漏れでしたわ。
懐王さんは、義理堅く秦に詫びに来たのだが、幽閉されちまう。
幽閉したのが昭王で、そのまま(宣太后)は楚人だし、懐王とは義理の親子だったもんで秦入国時はすっかり油断してた懐王なのだった。
この辺は「大秦帝国之崛起(昭王 ~大秦帝国の夜明け~)」というドラマで詳しエピソードがあった気がする。
それに宣太后とはすなわちみんな大好きな”ミーユエ(羋月)”女史である。
この回でミーユエ女史がフォーカスされることはないが、彼女の祖国の特徴を知るには良い教材だと思う。
さて、楚とはどんな国だったのか。
春秋時代、戦乱が始まったのは周王朝の分裂が原因だったのだが。
周王朝は封建制度を取っており、要地に王族や信頼のおける功臣を封じることで、王朝の安泰を図ってきた。
まぁ結局のところ、内乱と異民族の侵攻で周王朝は滅びるのだが。
周王朝における階層社会は固定化されていて、階級は絶対的であった。
そんな中で楚という国のトップは、王族ではない為にいろいろと軽んじられて来たようだ。
その悔しさを糧として
クッソ、負けねえぞ。
王族なんかより良い国作ってやるぜーーー。
っていう卑屈コンプレックス国、というのが基本路線だった。
西周以来、王族はもちろん諸侯も、未だ周王の権威に憚り続けていたが、楚の君主はいち早く(前八世紀中頃)”王”の称号を使い始めた。
反骨精神による臥薪嘗胆は素晴らしかったし、己のやり方を貫く漢前な性質は実に好ましいが。
他国が変法により、どんすか変化し国力をあげている時も、楚は個人の強化はしていても国の強化には目を向けなかった。
つまり、国内は相変わらず貴族たちが分治していた。
それにメスを入れる人が登場。
それが呉起さんといって士人だ。
この”士”という階層の出自は明らかではなく、でも間違いなく下層級である。
だが、この”士”人こそ時代の先駆けの階層であり、キーマンとなりえる者たちなのだ。
なめてもらっちゃ困るんだよ。
でもしかし呉起さんは、貴族からいろいろと巻き上げるんでもっすごく恨まれて、結局貴族たちに殺されちまうのだが。
彼のおかげで楚は、七国のなかで最大の版図を持つ事となった訳だ。
で、そっから半世紀くらいは安泰に暮らしてたけど、秦がぶいぶい言わして来て安穏と暮らすわけにも行かなくなり。
太子を人質にやったり、有名な屈原さんのエピもちょこっとぶっ込まれる。
相変わらず最期はナレ説だが、もう慣れたし、逆にそれで良い、とか思い始めてるてこだ。
第4集:韓国篇〜権術的代価
七国の中で最小の版図の韓は、六国の中で一番最初に滅んだ国だ。
前401年に周王から正式に諸侯として認められ、前375年に鄭を滅ぼしその故地に遷都した。
同じ三晋の趙と魏とは比較的良い関係を続けられており、名作『趙氏孤児』のあれこれもちょこっとだけこの回で語られている。
↑はこの回のキーマンポジで、韓における権謀術数の始祖みたいな人で申不害さん、中の人、海一天パイセンだ。
建国当時は、忠義で公正、開拓して前進する人柄だった韓人が、申不害により術治に頼るようになり、人間性も低下した風に説明されている。
わりと盛大に権謀術数のネガティブオペレーションが展開されるのだが。
考えてみて欲しい。
版図が小さいということは、農作物も人口も少ないということだ。
つまり、兵糧と兵士が少ないということだ。
戦国時代において、この二つが少ないならどうやって生き残っていくべきだろうか。
策を駆使せねば生き残れないのだから、術治に服するのは当然の成り行きとも言えるだろう。
途中、《史記》(河渠書)にも記載のある『鄭国渠』という鄭国という韓のスパイの建設したダムのエピソードもある。
間諜だと気付かれた鄭国が
「私は確かにスパイですが。
この渠は秦にとってとても重要で、完成したら必ず秦の利益になります。
私は、国より河が大事なんです。
だからお仕事続けさせてください。」
という韓にとっては、まじかよ!?案件だが、なかなか胸熱な河バカ男子には好感が持てる。
実際、この渠のおかげで塩分が多く農地に適さなかった関中の大地が沃野と化し、今も咸陽北部にその姿を残している。
弱小ではあるが権謀術数でなんとか生き残って来た韓ではあるが、嬴政は総合力のある男子なので、このくらいの術治など想定内だし、もっと上位互換な際どい策を練ってくる家臣も山ほどおるのだが。
嬴政は韓を滅ぼす前に、どうしても手に入れたいものがあったのだ。
それが韓非さんだ。
政は韓非の著わした『孤憤』と『五蠧』にもっすごく感銘を受け、憧れてたのだ。
ドラマではそんな描写はなかったが、てこの認識は↑だ。
で、韓非さんは秦に行ったは良いが、他の法家官僚たちからの盛大な嫉妬におおいに悩まされたし、李斯というライバルもおり、最期はこの李斯が毒杯を持って来た設定になっていた。
たしか政は投獄を命じただけだったが李斯がフライングで毒杯を届けた、とかそんな話を読んだことがある気がするが、本当かどうかはわからない。
術治に服し義理を忘れた国、それが韓だ、みたいな感じで終わっている。
第1〜4集まで、てこが見た感想
第1集をみた時は、ほぼ室内での再現ドラマで戦は↑こんな描写でナレ説、という仕様に少しがっかりしたが。
慣れてくると、わりと受け入れられるし、なんならこんな仕様の方が理解しやすいなぁ、と今では思っているくらいだ。
200年から、長いと600年くらいの長い歴史を1時間強で説明するのだから、余計なことに尺を無駄遣いする訳にはいかないのだ。
フォーカスするトピックの取捨選択には、時に首をかしげるものも少しあるし検証するとちょっとおかしい部分もあるにはあるが。
終わってみればよく纏めたなぁ、という感想だ。
てこはこの時代のことはあまり詳しくなく、てこのこの時代の情報源は『達人伝』という漫画だ。
てこは22巻まで読んでいるし、繰り返し読む愛読書の一つだ。
達人たちの生き方を学びながら、市井の人々の息吹も感じることができる良本だ。
書いていることが本当かどうかはわからない、念のため。
レビュー其の2では、魏・斉、そして大トリの秦を紹介する。
秦の始皇帝嬴政はてこ推しの皇帝であり、中華古装ドラマで数多く題材にされている人物なので。
皆もいろんなドラマの事前教材として、本ドラマを見ると良いだろう。
ということで、其の2へ続く。