中国ドラマ『ロング・シーズン〜長く遠い殺人』(原題・漫長的季節/漫长的季节)ドラマレビュー:20年長い夜が明ける時・・・【範偉/范伟ファン・ウェイ】【秦昊チン・ハオ】【陳明昊/陈明昊チェン・ミンハオ】【劉奕鉄/刘奕铁リウ・イーティエ】【蒋奇明ジャン・シーミン】【史彭元シー・ポンユエン】【唐曾タン・ゼン】キャスト情報・あらすじ・感想※ネタバレあり
ご訪問ありがとう、てこブログへようこそ。
今日は、中国ドラマ『漫長的季節』(原題・漫长的季节)ドラマレビュー:20年長い夜が明ける時・・・
を紹介するよ。
【基本情報】
監督:辛爽
脚本:于小千(原創故事/編劇)、潘依然(編劇)、陳骥(編劇)
P:張娜(総制片人) 薄氷(制片人) 盧静(制片人)
主演:範偉、秦昊、陳明昊、李庚希、劉奕鉄、蔣奇明、侯岩松、林暁傑、王佳佳、楊一威、唐曾、王芸荻
プラットフォーム:2023年4月22日〜騰訊視頻
41〜107分✖️12集
高評価なのは聞こえてきてたけど、いつか見よう、程度だったのが。
SNSでの優秀プレゼンに心を動かされ見始めたら一気に9集まで。
したら、10集からはまだブロックかかってる状態。(びっぷなら見れますよ、そりゃぁ、でもてこはけちなんでね)
たっぷり2週間待ってようやく10集からラストまで見ることが出来た。
監督さんが「隐秘的角落(バッド・キッズ)」と同じ方の様で、なるほど↓だ。
そこはかとなく似ている。
「隠秘的角落」は、子供の持つ純粋さが残酷さと紙一重である、と言うちーこ目線のドラマであったが。
今回は熟年のオトナ男子3人が主人公なので、酸も甘いも噛み分けたオトナ目線のお話であり、諦めた風でもあるが実は諦めきれない”熱さ”を持つ男子たちが一矢報いるお話だ。
どーでもいい話だが、「隠秘的角落」は一応原著まで読んでおり、そのレビューもしているので、興味のある方は読むがいい。
小説『悪童たち』(壊小孩/坏小孩)中国ドラマ「バッド・キッズ隠秘之罪・隠秘的角落」原作:小説レビュー
注:てこブログは、大いなるネタバレを含みます。
閲覧の際は、十分にお気をつけください。
ってな感じで始めるよ、最後までよろしく!
漫長的季節ってどんなドラマなん?
主人公は↑の3人のオトナ男子だ。
2016年の東北地方樺林市でのお話、季節は晩夏から秋。
一面のもろこし畑での立ちちっこ(立ち小便)から物語は始まる。
まずは真ん中が@王響【範偉/范伟ファン・ウェイ】
王響さんは、元は鉄工所の列車運転士だったが、リストラの憂き目に遭い今はタクシー運転手だ。
@王北という息子と二人暮らしだ。
次が画像右の@龚彪【秦昊チン・ハオ】
龚彪と打つのが面倒なのでゴンさんと呼ぶね(Gōng biāo)
驚きのでぶっちょハオにいさんだ。
若干は役作りで太らてるが、これは特殊メイクだ。
一見誰かわからんかった・・・
王響さんの嫁の従兄弟の婿。
大学卒業後、王響さんと同じ鉄工所に新卒入社、血気盛んな上昇志向の新入社員が、20年後にはだらしなくブクブクと太り、糖尿病も煩いながらの落ちぶれ感。
自分もタクシー運転手をする為に、運転手証明書&ナンバープレートを用意した。
しかし、同じナンバーのタクシーの当て逃げ事件が起こりタクシーを押収されてしまう。
どうにかせんと、と二人で捜査してたがある事が原因で、20年前にお世話になった元警官の@馬徳勝【陳明昊/陈明昊チェン・ミンハオ】に手伝ってもらう事にした。(画像左)
ぃやぁ、驚きましたよ、こっちにも。
わりとキレてないラテンダンスを披露してくれます、はい。(爆
馬さんは、高ポテンシャルの警官だったが、捜査方法とか協調性とか、そんなが煩わしくって上手に世渡り出来ないタイプの男子だった。
しかし退職後はラテンダンスにのめり込み、パグ(イッヌ)と二人暮らしの男子だ。
で、ある事が原因、と書いたが、そのある事とは。
ナンバープレート偽装事件の容疑者が、20年前の事件と関係のある人物だったからなのだが。
その20年前の事件とはいったい何のか。
1997〜8年の出来事を回想しながら2016年現在が描かれる仕様で物語は進んで行く。
これから見る方へのアドヴァイスなのだが。
王響さんが、ナンバープレート偽装事件の容疑者が20年前の事件のキーマンだと感じた理由。
「あいつだ」
ってわかった理由。
実は、夜の暗い中で撮った一枚の”パーカーを着た後ろ姿”の写真、
これただひとつで、その写真に写った人物が20年前の事件の”あいつ”だとわかったのだ。
これを最後まで忘れずに、念頭に入れて視聴していると、途中で犯人がわかる。
だからしっかり見ておく様に。
20年前の回想タームのオトナ3人男子の様子は、今(2016)のそれと比べると、格段にエナジー満載感が漂っている。
王響さんは、王陽という息子と嫁の3人暮らしで。
仕事は”ばか”がつくほど真面目で、細かい事にもうるさい亭主関白。
ぱぱの仕事を何の疑問もなく継ぎ、自分の子にも同じ世界で生きる事を望む男子。
ゴンさんは、まだでぶっちょでもなく、新卒でやる気満々。
俺の人生は薔薇色に決まってる、と根拠なく信じてる様なそんなウヴ男子。
馬さんは、幹部警官で、上司と部下の軋轢に耐えながらも意欲的な捜査をして、上司にも部下にもウザがられてる感じ。
貧乏くじひくタイプ。
でも、実は高ポテ(ポテンシャル)男子なので、目の付け所は悪くないが、捜査名目が立たず(上司命令)地道に(部下を使えない)自分の足で丁寧に捜査をしていた影努力型男子。
こんな3人3様な男子だが、それでも意欲的に日々生活していた。
そんな3人に流れた20年の歳月とはいったいどれほどの苦難だったのか、と思わずにはいられない変容ぶり。
特殊メイクや髪型服装などの助けもあるが、内から滲み出る重苦しさを表現する演者の凄さに感嘆せずにはいられない。
20年前の事件で、王響さんは息子の王陽くんを亡くしている。
王陽くんは事件に関わりがあった事を想像させるほど、遺体発見時に動揺しており、視聴者は
・王陽くんが犯人の可能性
と言うのをまず最初に考えるはずだ。
ちょっとずつの回想をつなぎ合わせてみると、王陽くんは殺人を犯せるほどの度胸はなさげだし、
将来はポエマー(詩人)を目指してる内気な男子だ。
犯人ではなさげだが、王陽君の死因は自殺のようなので、万にひとつ良心の呵責に耐え切れず〜ってのも可能性としては捨てられない。
序盤でしかし見たシーン。
誰か(おそらく男子、フード被ってるので特定出来ず)が、数個の袋を工場の用水路に捨てるシーン。
このシーンを忘れてた。
あの時は、工場職員が”金払え”と騒いでた時だったので、誰かが裏金をこっそり用水路に捨てた(隠した)のか?と思ってたが。
あれはバラバラにした死体だったのか、と言う事に思い至った時に湧き上がる疑問。
という事は、王陽くん以外に事件に関連する男子がいるはずだ、という疑問だ。
ぃや待て、そのフード男子が王陽くんの可能性はないのか?
なんて言う推理をし始め、じゃあ・・・ってその繋がりは?となる所で、今(2016)に戻る、
〜みたいに、ほんの小さなピースしか提示してくれない。
そして、20年前も今も捜査はさほど進んでいないしわりとぽんこつ捜査だ。
なので、このドラマは推理劇だが、作中の登場人物が推理するのではなく、視聴者が推理するタイプであり、
それぞれの登場人物にスポットを当てた人生群像劇という印象の方が強い。
20年後にタクシーの中で、スマホの画像をみる為に老眼鏡を掛ける姿に時の流れを感じ。
そして、王響さんには2016には王北くんという息子が居って。
【史彭元シー・ポンユエン】
わかりますかね、彼。
「隐秘的角落(バッド・キッズ)」の悪童のひとり@厳良だった男子だ。
悪童の時は、強そうな少年だったのに、オトナになりました♡
王北くんがどこから来て、どんな経緯で息子になってるかは、最終話残り10分で提示されるが、それまでは全くの謎息子だ。
王響さんは、20年前の息子王陽くんには、あーしろこーしろ、と言うこと聞かないと縛り上げたりしてたのだが、20年後は、好きな事を好きな場所で思い通りにやれ、と背中を押す変わりようにやはり20年の重みを感じるのだ。
20年前に何があったのか。
ある女子との出会いで、王陽くんの運命の歯車が狂い始める。
王陽くん【劉奕鉄/刘奕铁リウ・イーティエ】
ある女子(中の人、李庚希)
この女子は、ぱぱままを亡くし叔父さんに引き取られ育てられ、大学進学(医学部)で家を出てきた。
諸々の事情で、時給の良いクラブ(キャバレー的な)でピアノガールのバイトを始める。
王陽くんは、この女子を気に入ってしまい自分もキャバレーボウイとして(ぱぱに内緒で)バイト入社した。
医者玉(お医者さんの卵)女子は、ピアノガールでホステスではないので基本おさわりなどはNGで、もっぱらムーディークラシック(月の光・ドビュッシー)を奏でてるのだが。
強気に無礼を働くZzi(じじい)も出現し、屈辱を受けたりもして視聴者も憤る。
そんな無礼Zziに制裁を与える男子が出現。
それが謎男子@傅衛軍【蒋奇明ジャン・シーミン】
この彼がね。
初登場時からサイコパスみ全開で、キレてる演技が怖いんっすよー。
一瞬で、死体を用水路に放り込んでた男子と=(イコール)になってしまうはず。
ヤバめの男子で、この男子なら殺しもしそう、と思わせるキャラなのだ。
しかし、キャラの深堀りをしていくと
・医者玉女子は育ての叔父さんから虐待を受けていた
・ヤバい男子と医者玉女子は兄弟の様な関係らしい
・施設で知り合い、その後も交流は続き女子を陰日向で支えてきた男子らしい
と言う、わりとひどい背景があり。
さほどヤバい男子でもなさげな可能性も出てきた。
王陽くん、医者玉女子、ヤバい男子、このヤング3人の危なっかしさが、視聴者の心をざわつかせるのだ。
幼く、理想と現実のギャップの大きさに追い詰められて行った先に待っている悲劇。
これを想像するだけで胸が痛くて続きを見るのが怖い。
そして、彼らがこんなにも追い詰められて悩んでいるのに。
オトナは誰一人としてこの状況を知らなかった、というのが悲劇の原因のひとつだ。
ぃや、大人だけじゃないな。
この3人の中でさえ情報の共有はされていなかった。
王陽くんが、女子の身の上を知り何とか出来ないかとぱぱままに相談したならば。
違う結末もあっただろうに。
9集までに事件に繋がる背景は整った。
10集から、”20年前のあの日何が起こったか”の一部始終が語られる。
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クライマックスの肝は
・犯人は誰?
・息子王陽の最期ってどんなだったの?
漫長的季節てこが見た感想
全く予想していなかった。
完全なる想定外。
推理劇としては「隠秘的角落」には及ばない、などと思っていたが。
おおきなまつがい(間違い)だ。
推理劇として非常に魅力ある作品だったのだと真実を知った後思える。
3人のヤングの心の中が浮き彫りにされ、隠されていた本質が見えてきた時。
まじで人間の怖さを感じた。
最初は、熟年オトナ男子の目線の物語だ〜、などと思ってたが。
実のところはやはりこのヤング3人の中にある、”予想もつかない人間性”を隠れ主題にした物語だったのだ。
視聴者は全て理解できたが、物語のオトナ男子たちは何があったのか未だ知らない。
そんな2016年、オトナたちに立て続けにアクシデントが起こるのだ。
楽しかった3人のカラオケムーブ。
それにほっこり笑ってたのも束の間、まさかのフラグだったとは・・・
まずはでぶっちょゴンさん。
20年もの間手放せなかった執着を手放せた時。
・・・
まぁ、笑ってたから・・・いいっすかね・・・
ってか監督さん、こうする必要ありますか?(涙
そして、ラテンダンス馬さん。
脳溢血で倒れ一命取り止めたが、障害は残り・・・
しかしそんな時ひらめく脳みそ。
こうなってようやくか、という悲しさ。
現職警官は【唐曾タン・ゼン】
馬さんの元部下だ。
結局彼ら現職警察官によって、20年前の事件の犯人が特定される。
王響さんが犯人と対峙する。
彼は答えを得たのだ。
・息子王陽は人を殺したか?
・なぜ息子王陽を殺したのか?
なぜこんなに今年の秋は長いんだ・・・
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長い長い20年の秋だったのだ。
そこに初雪が舞う。
彼らの季節がまた巡り始める・・・
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見応えのある作品だった。
顔面偏差値に1ミリも頼らない、内容真っ向勝負の世界。
サントラも毎回違い、ある時はブルーズハープでカントリー、
またある時はスチールギターのブルージー、
難解なアンゴラもあればクラシックもあり、
その都度テエマがあり、それに準じたBGMを使う拘り。
そして、そのBGMに負けない東北地方の風景。
脚本も、時系列が細切れ仕様なのにきっちり辻褄合わせてきたし。
そして、何と言っても20年前と20年後を同じ演員が演じているという凄さ。
本当に20年経った、と思わせる演技力は見事だ。
演員とはどうあるべきか、と言う簡単そうで難しい問いに答えをくれる、そんな演員たちに感謝したい。
今回は、てこ監修”イケメン備忘録”は開催しない。
このドラマは、
きゃー、イケメンっ♡とか
所作が美しーわー♡とか
見つめられたい♡とか
萌え♡とか
と全く無縁のドラマだからだ。
実は書きたい人も居るには居たが(ハオにいさんとヤバい男子)書く事でミーハーな感じにしたくなかったのでな。
次の機会を待ちたいと思う。