中国ドラマ『康熙帝~大河を統べる王』(原題・天下長河/天下长河)ドラマレビュー其の1:1〜25集くらいまで:清朝康熙年代・黄河に魅せられし熱き男子たちよ♡【羅晋/罗晋ルオ・ジン】【尹昉イン・ファン】【陸思宇/陆思宇ルー・スーユー】【李昕哲リー・シンチュウ】【黄志忠ホアン・ジーチョン】【公磊ゴン・レイ】【蘇可/苏可スウ・クウ】【梁冠華/梁冠华リャン・グアンファ】【趙麒/赵麒ジャオ・チー】【郭之廷グオ・ジーティン】キャスト情報・あらすじ・感想※ネタバレあり

2023年6月14日

ご訪問ありがとう、てこブログへようこそ。
 
今日は、中国ドラマ『天下長河』(原題・天下长河)ドラマレビュー其の1:1〜25集くらいまで:清朝康熙年代・黄河に魅せられし熱き男子たちよ♡
を紹介するよ。
 
【基本情報】
 
監督:張挺
脚本:張挺
P:姚嘉、任旭
プラットフォーム:芒果TV、湖南衛視、2022年11月11日〜
45分✖️40集
 
久々のガチの歴史ドラマっすよ。
女子は居ない。
いや、居ないこともないが、居ても太皇太后とかであり。
マジモンの男子たちによる男子たちのためのドラマだ。
登場人物のほとんどが髭なので、つまりは熟年男子だし。
きらきら系男子も居るには居るが、きらきら封印キャラなので。
要するに絵面も華やかではなく(衣装やセットは豪華)暗めだ。
 
登場人物は、ほぼ皆歴史上に実在した人物であるが、生没年を調べてみると割とズレがあるようだ。
まぁしかし《歴史伝奇劇》と銘打ってるので問題ないし、歴史をどのようにドラマに組み込むのか興味津々だ。
と言うのは、康熙帝という人物は実に多くの事をやってのけてるので、
 
・40集という短い尺でどこまで出来るのか
・何が語られて、何が端折られるのか
・歴史と照らし合わせ楽しみたい
 
という感じだ。
なので、時折どうでもいい歴史小咄をぶっ込むつもりで長くなる予感だ。
 
本編の前に、少し康熙帝の話をしておこう。
 
清の聖祖康熙帝は満州人で、1654年4月5日北京で生まれ、1722年12月20に69歳で亡くなった。
康熙帝は史上最高の明君とたたえられるが、その風貌を伝える第一級の史料がある。
康熙帝の宮廷に仕えたイエズス会の宣教師、ジョアキム・ブーヴェ神父がフランス王ルイ十四世に献上した『康熙帝伝』だ。
ちょっとお高いが、古本なぞ探して読んでみるのも良いだろう。
これを読むと、康熙帝が中国の伝統的な学問だけでなく、ヨーロッパ科学などにも強い興味を抱いていたことがわかる。
天文学、数学、幾何学、解剖学、化学など、多方面の分野について、宣教師たちに進講させ、自らも熱心に学習し、観測機器、測量機器を集めてその操作に没頭した。
これが十七世紀のしかも極東の、それも狩猟民出身の君主なのだから、いかに超人的な天才であったかが知れると言うものだ。
 
大変に勤勉で、天体観測から押し花まで、なんでもするし、なんでもできる人だった。
贅沢を好まず、行軍などの厳しい状況でも家来と同じ食事に耐えられるし、文句などもちろん言わない。
美術品の目利きも完璧だし、満州語もモンゴル語も漢文も完全に読み書きできるし。
ついでにモンゴル相撲も激強だし、武術(剣・弓)も得意だ。
こんな完璧人間が上司なら、ミスなんてすぐにバレるよね。
皇帝の信を得ようと思ったら、相当ハイレヴェルな事を要求されるだろうしついてくのが大変そうだ。
 
頑健な康熙帝は長生きし、その治世は称えられるべきものだが。
そのせいで皇太子は、皇太子時間が長いし、完璧ぱぱのプレッシャーにより闇へと向かってしまい。
康熙帝は、愛する皇太子を廃位、幽閉する事となる。
この辺のいざこざ詳細は、「諍い女」とか「若曦」などのドラマで数多く紹介されてるのでご存知の方も多いだろう。
 
康熙帝は紫禁城の景仁宮で生まれた。
父は世祖順治帝で、康熙帝はその三男だった。
母は佟氏といい順治帝の側室で、先祖は漢化した満州人の家系の出だった。
 
疱瘡に罹った事を口実に、城外に出されるが生き残り。
生母は早くにお亡くなりになっていたので祖母である孝荘文皇后に育てられる。
ドラマに出てくるおばあさまはこの孝荘文皇后だ。
孝荘文皇后はホンタイジの側室で、順治帝の生母だ。
ブムブタイですよ、つい最近レビューしましたよ(「蘇茉児伝奇(王家の愛)」参照のこと)
順治帝の病気が悪化し、何事にも嫋やかなる順治帝なので(争いとか、醜いことがキラいな男子なのだ)。
病気(疱瘡)も克服した強運持ちだし、おばあさまにしっかりと教育されてるし、って事で皇太子に指名し、順治十八年(1661)に玄燁は8歳で皇帝に即位した。
 
本編書く前に既にこんな語っちまって。
ほんとに長くなりそうで、先に謝っておく。
長くてごめんなさい。
 
※てこブログは、大いなるネタバレを含みます。
閲覧の際は、十分にお気をつけください。
 
ってな感じで始めるよ、最後までよろしく!

天下長河ってどんなドラマなん?

清朝康熙年代15年〜28年までの治世を、黄河治水を軸に描いた物語だ。
 
康熙15年、長雨により黄河が氾濫するところから物語は始まる。
主人公三人のなかの一人目@康熙帝【羅晋/罗晋ルオ・ジン】
 
大氾濫中の黄河に、民衆とともに立ち向かう一人のお役人、主人公二人目の@靳輔【黄志忠ホアン・ジーチョン】だ。
多大な犠牲を出し、責任を問われ都に護送されるお役人@靳輔。
皇帝は、直接話を聞くーー、と息巻いております。
それを宥めるのは官僚のソンゴトゥ索額図とミンジュ明珠。
 
ソンゴトゥ索額図は、正しくは赫舍里·索額図で、満州正黄旗人。
ソニン索尼の三男だ。
中の人【梁冠華/梁冠华リャン・グアンファ】は、「大明風華」@朱高熾が記憶に新しい古参。
 
ここで歴史を少し説明すると。
ソンゴトゥのぱぱソニンが亡くなると、オボイが反対派を粛清して専横を振るうようになり。
康熙8年(1669年)、康熙帝はソンゴトゥと謀り、モンゴル相撲にかこつけてオボイを捕らえた、という過去がある。
康熙帝16歳の頃だ。
この辺のくだりは「寂寞空庭春欲晚(皇帝の恋)」をみた方はよくわかっているだろう。
さらにはソンゴトゥは、皇太子胤礽の生母である孝誠仁皇后(康熙帝の一番目の皇后)の叔父にあたる人物だ。
つまり、康熙帝はソンゴトゥに恩もあり頭が上がらない背景があるのだが。
康熙15年と言うことは康熙帝は23歳であり、オボイを粛清したのはわずか7年前と言う事であり。
本格的に親政を行いまだ数年であると言う背景だ。
皇帝としての威厳も野望も十分に持っているが、老練の正黄旗勢は軽視できないしバランスの取り方が難しいところだ。
 
で、ソンゴトゥは陰でいろいろと都合の悪い事をこっそりやっていて。
例えば黄河を密輸運路として使用していたり、治水に関わる汚職の実態を知っているので(ありていにいうと黒幕)。
とりまお役人@靳輔が罪を全部かぶってくれたら都合が良いという立ち位置だ。
 
もう一人の重臣ミンジュ明珠は、正しくは納蘭明珠で、こちらも満州正黄旗人。
叶赫那拉·金台吉の孫、イェヘナラ氏の直系だ。
おじいちゃんの妹がヌルハチの側室で、ホンタイジの生母だから康熙帝とは血縁だね。
中の人は【公磊ゴン・レイ】
長安十二時辰」ではランク外だが、「奇蹟·笨小孩(奇跡の眺め)」ではちょっとだけフォーカスしている男子だ。
 
ソンゴトゥとは敵対する立場で、ソンゴトゥほどではないがミンジュも相当な古狸古参だ。
ソンゴトゥほど明確な着地点がある訳ではないが、時勢を見てうまいこと行くなら甘い汁を吸い、康熙帝の機嫌をとりながら、足場を万全に整えたい、といった感じ。
皇長子胤禔の生母の恵妃(ナラ那拉氏)は明珠の娘設定だ。
康熙帝は早いうちに皇太子を決めてしまい、その後皇太子を一心にエコ贔屓して育ててきた。
長男である胤禔は、その後成長してもさほど存在感もないし、跡目レースからは外れてる残念な男子だ。
ミンジュは康熙帝の跡目問題はナイーヴであり、立ち入ってはいけない領域だと悟っているが。
本人胤禔や生母恵妃にしてみれば騒ぎたくもなる状況であり。
いつかチャンスがあれば、とは思ってはいる現状のミンジュだ。
 
で、ミンジュは康熙帝の意を汲んで、堤防決壊の原因追求をしないといけない訳であり。
すなわちそれは、うすうす康熙帝も気付いてはいるがソンゴトゥ一派による汚職が関係してるだろう。
なので、それを暴くためにもお役人@靳輔を死刑なぞには出来ん、って事で。
自身の信頼する従者を遣いにやり、丁重に都へ連れ帰る事にする。
 
その護送中に出会うのが三人目の主役@陳潢【尹昉イン・ファン】だ。
黄河の氾濫中に川の中で産まれたと言う河神のような男子だ。
 
黄河治水についての独創的かつ画期的な本を読んでた、お役人@靳輔。
 
「黄河に興味があるなら、この本を読んだらいい」(お役人@靳輔)
 
「それオレ書いたんだけど」(@陳潢)
 
という漫画のような運命の出会いのお二人だ。
このお二人が黄河治水に生涯をかけて臨むエピソードが、本ドラマの基本筋だ。
 
ところで@陳潢はなぜ上京しようとしてるのかと言うと。
兄貴分二人と科挙を受けに行くととこなのだ。
その兄貴分を紹介しよう。
まずは大兄@徐乾学【趙麒/赵麒ジャオ・チー】
中の人は、@若昀の「警察栄誉」に出てた気がする。
大兄は、探花(第三位)で見事科挙合格だが、大した仕事をさせてもらえず後ろ盾もなく燻ってる設定。
とりまソンゴトゥとミンジュの両方にコンタクトし取り入ろうとするも、何かと不器用な男子でうまく立ち回ることが出来ない。
 
小兄が@高士奇【陸思宇/陆思宇ルー・スーユー】
中の人は、「司馬懿軍師連盟」の@汲布くんっすね。
今回はおそらく原音だと思うのだが、思いの外イケボだ。
 
小兄は、科挙落選で地元で占い師やってたのをソンゴトゥが見つけて、大兄の弟分だし@陳潢のアニキ分でもあるから、何かと役に立つのでは、と思って手元に置く事にする。
置いたけど、すぐに捨てられて今度はミンジュのお世話になる事になり。
如才なく立ち回る賢い小兄は、康熙帝に気に入られ一気に7タイトルくらいすっ飛ばして、ソンゴトゥ、ミンジュに並ぶ高官へと成り上がる。
 
で、一番下の弟の@陳潢も科挙落選で官途を諦め黄河沿岸を彷徨いてたら、おしのび視察康熙帝一行と出会い。
 
「あー、お前があの本の著者@陳潢だったの?
なら黄河治水してよ」
 
と言う事で、これまた漫画みたいな運命の出会いのお二人だ。
 
@陳潢は、黄河氾濫の元凶が汚職官僚たちによる手抜き工事だったことを暴いたりして、
お役人@靳輔があわや斬首寸前に助けられたり。
黄河大好き二人組を、黄河治水の任に着かせる事になるまでがだいたい10集くらいだろうか。
 
ここまでの康熙帝は、
 
・二人の黄河愛(治水知識も含めて)
・二人の私利私欲のない清廉潔白な姿勢
 
以上二点を高く評価し、
 
「朕は君らを信じるぞ。
全力でサポートするから、君らも朕を信じて精進してくれ。」
 
という姿勢であり、その気持ちに応えたい、といういわば相思相愛両思いな三人だった。
さてさて、これからの長い黄河治水。
一体どんな困難が待ってることやら・・・
両思いがずっと続けばいいが、そうはいかんだろう。
というのは、黄河バカ二人は黄河の事だけを思っているが。
他の官僚はそうはいかない。
今まで入ってきた袖の下がないと生活も立ち行かないし、いろいろと不都合なことが多すぎる。
不正を暴かれたら困る官僚も大勢おるし、つまり黄河バカ二人組を消したい人間のなんと多いことか。
 
まず最初の難関は、お金だ。
治水には多大な金がかかる。
康熙帝は二十代のほとんどを”三藩の乱”の平定に費やし、戦に次ぐ戦で国庫は火の車だったのだ。
ここでこの”三藩の乱”を少しばかり説明しよう。
・・・
ぇ?いらない?
・・・
そう言わんと、まぁ聞いて下さい。(懇願)
 
康熙帝がオボイを粛清し、じゃまものの内大臣たちを片付け、自分が独自の意思を持った主権者だと天下に宣言してわずか四年後。
”三藩の乱”という大規模な反乱が起きた。
 
三藩とは
 
・華南の実力者、雲南省昆明の呉三桂
・広東省広州の尚可喜
・福建省福州の耿仲明(息子の耿精忠の代になってる)
 
の三人だ。
もともと三藩は、康熙帝を補佐する四人の内大臣と結託し権勢をふるってたのだが、その四人が康熙帝のクーデターで一挙に姿を消したので、彼らは北京宮廷における後ろ盾を失った訳で、不安を感じるのは当然の成り行きだろう。
 
で、反乱のきっかけは、1673年に広東省広州の尚可喜が”隠居したい”とカマかけたら、意外にも速攻”良いよ、帰っても”と言われてしまい。
意外な返事で狼狽えたが、他の二人も立場上”隠居願い”を出し、三人揃って隠居は流石にNGが出ると思いきや、これにも速攻”良いよ、帰っても”と返事されてしまい。
康熙帝の意外な反応に三藩たちは窮地に陥り、呉三桂と耿精忠は準備不足のまま反乱に踏み切る事になる。
独立しようと、つまりは権力闘争が始まったのだ。
尚可喜だけは反乱に加わらなかったが、華南・華中は戦火のちまたとなり、西北の陜西省まで波及した。
この情勢に、満州人の大臣、将軍はだらしがなく皇帝軍は至る所で敗戦した。
 
二十歳になったばかりの康熙帝は、この困難な状況のもとで戦略家としての才を発揮した。
臆病な皇族将軍の尻を叩き、漢人の有能な指揮官を引き立て、要領よく兵力を配分し、兵站線を確保し敵を長江線で食い止め、まずは陜西省の反乱を片付け、次に耿精忠を降伏させ福建省を取り戻す。
呉三桂はやぶれかぶれで湖南省の前線で即位式をやったりして、ついでに皇帝を名乗ったりしたがすぐに死んだ。
1681年、皇帝軍が昆明を包囲し、呉三桂の孫は自殺し、八年に及ぶ内戦はやっと終わる。
こうして康熙帝は、二十八歳で中国全土を支配下に収めたのだ。
 
と言うのが三藩の乱の内情だ。
で、今二十三歳くらいなので、まだまだ反乱鎮静中であり、お金の都合をつけるのが大変だよ、という背景だ。
 
晴れて河道総督に任命され、黄河治水における全権を任されたお役人@靳輔。
康熙から秘密の交換日記箱を渡され、気合も新たに入れ直す@靳輔だ。
@陳潢は、あまりにも黄河バカすぎて忖度とかまったく出来ない横柄くんなので官位は与えず。
でも、そんな大人の事情には全く興味ない@陳潢は凍った黄河の上ではしゃいでます。
もうね、黄河を見る瞳がきらっきらなんですよ。
なんとも尊い目をしよる男子だ♡
 
で、総督たちはのっけからピンチであります。
康熙がようよう工面した金を、私腹に入れる官僚たち。
20集くらいまでは、本格的に黄河治水を始める黄河バカ二人組が困難に立ち向かう様が描かれている。
そこにいるのは二種類の人間だ。
正義組と邪悪組だ。
もちろん正義を応援するが、圧倒的に強いのが邪悪組だ。
正義組が邪悪組に押され、負けが続くのをはらはらいらいらして見てないといけない。
 
正義組の黄河バカ二人は、揺らぐことのないもっすごい強い信念を持っているので。
そうじゃない人にとっては目障りだが、やはりその正義に同調する者もやがて出てくる。
だって正義だもん。
誰だって良い事したい、って気持ちは持ってるはずだ。
なので、困難ながらも(康熙の影のサポートもあるし)、誠実な仲間も徐々に増え、少しずつ少しずつ治水は進む。
 
そんな清廉潔白清流属性のお二人とは全く違う世界が朝廷では繰り広げられているのだ。
ほぼみんな邪悪組。
大兄の徐乾学は、なんとも卑屈で情けなく弟たちをがっかりさせているし。
ソンゴトゥに言われるまま、殺人までやってるし・・・
汲布くんも、弟を助けるけど、悪さをした皇族官僚の逃げ道も同時に作ってあげる如才のなさ。
ソンゴトゥとミンジュは言わずもながで、互いの腹を探りながら康熙には良い顔をして、とその場その場を渡り歩く。
そんな臣下ばかりの康熙の悩みは深い。
 
「みんな嘘つきばかりだ・・・」
 
と嘆くのも仕方あるまい。
彼が欲するのは、心の底から誠実で自分を1ミリも疑わず10000%応えてくれる臣下なのだ。
今のところ、疑いなく信頼している臣下は黄河バカ二人組だけ、という状況だ。
 
そして、とうとう三藩の乱が平定される。
これで予算がおりるぞーーーー、と喜びも束の間。
康熙さん、次は台湾言うとります。
 
ここで、台湾の話を少ししましょうか?
・・・
ぇ?いらない?
・・・
三行だけ説明させて下さい。
 
台湾は、鄭成功がオランダ勢力を駆逐しブイブイ言わしてたのだが。
1662年に病死し、子の鄭経が三藩の乱に連動して清に反抗を続けていたという歴史的背景がある。
おかげで清は、一時期長江以南を全て奪われるなど、崩壊の危機を迎えた事もある。
康熙は、鄭氏政権からの降将を登用して台湾を制圧、反清勢力を完全に滅ぼしたのは2年後の康熙22年(1683)だ。
 
で、時系列は前後するが。
 
康熙21年、黄河治水全行程の三分の二が終わったところで秋の長雨襲来だ。
黄河が再び決壊の危機に見舞われる。
 
つまり、台湾制圧はまだ先のことで、この長雨の時はまさに台湾出兵でごたついてた時であり。
満人は馬上でこそ死ぬべきで、海でなんぞ死ねるか、などと騒ぐ満人。
ここぞとばかり賢策を献上する漢人出身官僚や、鄭氏に恨みのあるものを登用したりと、朝廷は大いに揉めていた真っ最中でもある。
満人漢人問題は根深い問題であり、辮髪やチャイナドレスの話などいつか機会があったら書きたいと思う。(今日は遠慮しとく)
 
しかし、ここでのポインツは。
康熙は結局のところ自分の思った通りに物事を運ばないと気が済まない質なのだという所だ。
だからこそ康熙はいくつもの偉業を成し遂げられた訳だが。
どんなに賢策を献上されても、自分の意向とズレているならそれを採用することはない。
言い換えれば、自分の意向を推進してくれる者の策だけを汲み上げるのだ。
こうなると、何が最善か、の真意が変わってくるのだ。
民・国にとって、ではなく、康熙帝が何を望むか、が重要になってしまうのだ。
 
康熙は、老練古参や新人賢者などをうまくあしらいつつ操ってるように見えるが。
実のところは、古参たちは何枚も上手であり、新人賢者も脳みそフル回転で損得を計算している。
要するに、行き着くところはwin-winの関係に落ち着いてしまうということだ。
康熙帝の、苦悩は深くなるばかりだ。
 
で、長雨でジリジリと雨量が増える中、黄河バカ二人組は、桃源県の住民を避難させて堤防を開ける事で大決壊を避けようとしたが。
それを良しとしない頑固ものが居た。
@于振甲、中の人【蘇可/苏可スウ・クウ】(てこブログ「淘金」参照のこと)
この男子は、もういろいろとめんどくさい男子だし、もう間違いだらけの男子なのだ。
キャラが立ちすぎるほど立ちきってるし、白黒石ムーブはキモいし怖い。
日々死ぬほど自己批判をし、反省しまくってるのに。
全然成長せず、個人の評判がすこぶる気になってしまう男子だ。
こうなりたい、という理想像が”尊い自分”であり、だからこそ全てに過剰反応すぎて疲れるし腹が立つ。
こんなんリアルで同僚だったり上司だったら”〇〇ハラスメント一発退場”人物に間違い無いだろう。
 
この男子が、桃源県県令なのだが。
 
「堤防きったらうちの町が死んじゃうだろ、だめだ」
 
「とりま施設に避難してもろて、その後補償するから新しい家建ててほしい。」
 
「なんでうちがそんな犠牲を強いられるのか、いやだ」
 
「この場所に水量を誘導せんと、江蘇・山東・安徽三省が水没しちゃうんだって!」
 
「い・や・だ」
 
で結局、江蘇・山東・安徽三省に飢餓・疫病を含む大災害を引き起こしてしまう事となるのだ。
于振甲の罪は大きい。
万死に値する独りよがりの自己満足だ。
 
もう黄河バカ二人組は、揃ってショックのあまり倒れてしまってたぞ。
今まで、”湯水の如く”金を使ってこのざまか、という声が聞こえてくるのは当たり前。
さあさあ、これを機に黄河バカ二人組を消し去ろうと、各方面が動き出すであろう。
康熙帝は彼らを守ることが出来るのか。
彼らなしで黄河治水は出来るのか。
 
ってな感じで、後半へ続くのだ。

天下長河1〜25集くらいまで、てこが見た感想

黄河愛に溢れる二人。
 
兄さんと呼ばれる@靳輔は、自らの給金を全て治水に充て彼ら家族は嫁の裁縫手当で暮らす。
毎日毎日、自らも労働し、ただただ黄河治水に専念する毎日だった。
兄さんから”天一”と呼ばれる@陳潢も、ただただ毎日黄河の事だけを想っている。
彼の頭には、日々新しい治水アイディアが溢れてくるのだ。
黄河を見つめるきらっきらの瞳。
凍える黄河に足を入れる時、その瞳がさらに輝く。
彼の吐く白い息、凍える黄河、節くれ立つ労働者の手足、それらの醸し出すテクスチャの対比が芸術的だ。
 
正直な話、この”陳潢&黄河”シーンは何度もてこを泣かせた。
悲しかったり嬉しかったりする訳ではないが、なぜだか涙が溢れてくるのだ。
圧倒的な自然を前にすると、言葉を失うものだが。
そういった意味で考えると、陳潢は黄河の一部、という感じなのかもしれない。
 
その黄河バカ二人組とは対照的な朝廷の官僚たちやそれに追従する弱きものたちの生き方よ。
強さやプライドの本質を考えさせられるこの対比。
てこのようにオトナになると、どちらの生き方も理解できるから尚のこと切ない。
 
ところで、本編では華麗にスルーした出来事があるのだが。
堤防建設に使用した石に関する汚職で、@靳輔の息子が斬首されそうになってしまう案件が勃発していた。
黄河バカ二人組を消し去りたいものたちVS助けたい康熙帝チーム、で色々とすったもんだしたのだが。
最後まで見ればネタバラシがわかるのかと思ったが、最後まで見てもわからない点。
石を変えた黒幕は誰?だ。
・・・
わかる方居ます?
皇長子胤禔がミンジュに言ってたあの一言。
 
「すんごいまじない(魔術)をこの目で見た」
 
って言ってましたよね?
あのフラグ回収してませんよね?
もしかしたらもしかしますかね。
よくよく考えても辻褄は合わないが、辻褄の合う脚本があった(カットされた)という可能性。
ここいら辺の見解がある方は是非とも教えて頂きたい。
 
もひとつ、ところで。
歴史と比べてみよう、の観点で話したい。
三藩の乱平定の後、康熙が真っ先に取り掛かったのは北方問題だったのだが。
てこの友人に北方について長い間研究している人間が居るのだが、彼の話を聞くにつれ感慨を深めるてこなのだが。
ネルチンクス条約締結についてのエピソードがなかったのは非常に残念だ。
もうこんなてこ好みのドラマなら100集超えだってなんら構わないのに、よりによって40集とか短すぎやろ。
ネルチンクス条約とは、清にとってもっすごく重要な条約であり。
康熙がロシアを追払い国土を死守したのに、清朝末期には政治が劣化してロシアの言いなりになってしまうのだ。
康熙もこんな未来が待ってるとは、露ほども思ってなかったろうなぁ。
 
もひとつ、まだ語られてない話が、康熙の生涯最大のライバル”ガルダン”の事だろう。
この男子の話なしには康熙の事は語れないほどの存在なので。
間違いなく後半は出てくるはずだ。
ガルダンの話が、黄河にどう絡むのかを考えると、直接絡みがある訳はないだろうから。
ガルダン関係で金がない、とかそんな感じだろうか。
 
最後にもひとつ。
本編で紹介できなかった本作の萌えポジを紹介して其の1は終わりにしたい。
 
@伊桑阿【郭之廷グオ・ジーティン】
イサンガ伊桑阿といえば順治年間の大学士みたいな相談役だった記憶。
康熙年間のインゲルギョロ氏(伊爾根覚羅氏)で該当するのは、フラタ傅拉塔かなぁと思う。
フラタはそれなりな官職(なんとか大臣)だったように思う。
 
本作のイサンガはソンゴトゥにくっついてる八旗の小物風味。
やってる事言ってる事、全てがクズいけどてこのドンピシャルックの男子なのさ。
そしてさらに興奮するのは、おそらくはお髭は自前だ♡
ってな感じで其の2も長くなるけどよろしく!